免疫療法について(前編)

2016/07/14

渡です!
本屋さんで面白い見出しを見つけたので衝動買いしました。
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免疫療法についての特集でした。
免疫療法という言葉自体は実は国試の不正解選択肢としてよく出てくる単語です。
多分過去に10回は余裕で出てきているのではないでしょうか。
80回代後半くらいから出てきていますが最新では109A-41がそうです。

109A-41
45歳の男性。人間ドックで右腎の腫瘤を指摘されて来院した。1か月前の人間ドックの超音波検査で右腎に直径3cmの腫瘤を指摘された。自覚症状はない。体温36.3℃。血圧138/82mmHg。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。尿所見:蛋白(-)、糖(-)、沈渣に赤血球1~4/1視野、白血球1~4/1視野。血液所見:赤血球440万、Hb 14.8g/dL、Ht 41%、白血球4,600、血小板18万。血液生化学所見:総蛋白7.3g/dL、アルブミン3.9g/dL、総ビリルビン1.0mg/dL、AST 38IU/L、ALT 32IU/L、LD 216IU/L(基準176~353)、γ-GTP 38IU/L(基準8~50)、尿素窒素14mg/dL、クレアチニン0.9mg/dL、尿酸6.3mg/dL、血糖82mg/dL、Na 139mEq/L、K 4.6mEq/L、Cl 106mEq/L。CRP 0.2mg/dL。腹部造影CT(別冊No.19)を別に示す。
治療として適切なのはどれか。

109A-41

a 免疫療法
b 放射線治療
c 抗癌化学療法
d 分子標的薬投与
e 根治的右腎摘除術

ただ「免疫療法」という選択肢が正解選択肢になったことはかつてありませんし、
(本問もeが正解です)
少なくともこの先5年くらいの間も正解選択肢になることは無いのではないかと思います。
免疫療法という言葉自体はだいぶ昔からありますが、
多くは民間療法的であったり、
そうでなくても十分なエビデンスがなかったりで
なかなか正式に医療現場で行われることのなかった治療法です。
ただ、こちらの雑誌でも紹介されている免疫療法の薬「オプジーボ」は
2014年に保険でも使用できる薬(=正式に国が有効かつエビデンスありと認めた治療法)として
認可されていますので、普及度合いによっては5年後以降くらいには
もしかしたら国試でも選ばせる問題が出るかもしれませんね。

今回面白いなと思ったのは、この雑誌(写真手前の方です)って
週刊エコノミストという経済雑誌なのですよね。
写真奥の方は医学雑誌ですが特集の「高額薬剤が国を滅ぼす」では
まさにこの免疫療法の薬が取り上げられていました。
免疫療法の薬「オプジーボ」は「1剤で国家が滅びかねない」と
言われたことで医療界・財政界を震撼させた薬です。
従って医師だけでなく政治経済分野からの注目度も極めて大きい薬と言えます。

C型肝炎と薬価の話でも触れましたが、近年技術の進歩に伴い薬価が跳ね上がっています。
これがアメリカであれば「うちには高い薬は無理だからあきらめましょう」となるわけですが、
日本は国民皆保険、高額医療助成もあるので、高い薬でも患者負担が少ないまま使うことができます。
しかしその差額はしっかり皆が出し合った保険から支払われているわけで、
国民医療費自体は跳ね上がっていきます。このままでは国民皆保険が
崩壊するのではないか、ということで財政界からも注目されているわけです。

長くなってきたので後編に続く!