情報更新 2013/02/17
『ハリソン内科学』が優れている点
――――孝志郎先生はご自身でも『ハリソン内科学』を使用されているそうですが、具体的にどこがいいのでしょうか?
まず僕が常日頃医師として研鑽を積む上で大切にしていることは、①病態生理(疾患のしくみ)、②症候学(患者さんの言葉)、③経験の3つです。その中で、①病態生理と②症候学については、『ハリソン』によってその基本となる考え方を学べます。それに③経験を少しずつ加えていければよい。これが臨床力ですが、実はこれこそが最近の国試の必修問題を解くカギでもあります。僕が受験した一昔前とは違って、現在の国試の内容は完全に臨床の現場に重なっています。
『ハリソン』が非常に優れているのは、疾患がどういう理論でその症状になってしまうのか、という病態生理をしっかり記載してあるところですね。同時に病に倒れた患者さんが実際にどのような言葉を使うのか、その患者さんの言葉で書いてあるところもいいです。 あとは疫学がしっかり書いてあるのもいいですね。学生に「どこから勉強したらいいのでしょうか?」と聞かれたら、僕は必ず「疫学を見なさい」と答えます。たとえば世界に30人しかいないレアな疾患だったら、その勉強は後まわしにしてもいい。それよりも非常に多い病気、普通の外来をやっているときに、当たる確率の高い疾患を優先して勉強するべきでしょう。
「シャルコーマリートゥース病」という神経難病があります。医学生や研修医にありがちなのが、その名前に負けて「もういいや」となってしまうこと。しかし、『ハリソン』で調べると、一行目に「遺伝する神経疾患の中で、世界でもっとも多い病気」と書かれています。だから、勉強しなさいということになる。 臨床の現場でも、僕の下についた人間には実際に『ハリソン』を使って教えています。学生が病院見学に来たときは、自分の横につけて患者さんを診ながら教えるのですが、そこで例えば緊急疾患であるとか、ちょっと興味深い症例が出たとします。そういった場合、まずその場で説明し、さらに本部に帰ったあとに『ハリソン』を開き、病態生理や症候を確認するようにしています。