Menu 17 「読み方」と「発音」で注意が必要な英語表現

2020/08/03

こんにちは。「医学英語カフェ」にようこそ!

ここは「コーヒー1杯分」の時間で、医学英語にまつわる話を気軽に楽しんでいただくコーナーです。

本日のテーマは、医学英語に関する「読み方」と「発音」。

国際学会で日本人医師のプレゼンテーションを見ていると、「全体的に素晴らしい表現と発音」を使っているものの、数字や単位、そして略語などの「読み方」が正しくなかったり、特定の単語がうまく「発音」できていないという場面をよく見かけます。どちらもコミュニケーションを取る上では大きな問題ではなく、「些細なこと」と言えばそれまでなのですが、「些細なこと」であるが故にこういった「読み方」と「発音」の間違いは訂正されることなく使われ続けてしまいます。
そこで今月は、医師が使う英語表現の中で、「読み方」と「発音」に特に注意が必要なものをいくつかご紹介いたします。

バイタルサインの正しい読み方
まずは医師にとって基本となるバイタルサインの読み方を確認しましょう。そもそも「バイタルサイン」には複数の項目が含まれるため、英語ではvital signs のように複数形で表現するのが一般的です。日本語には「単数形」や「複数形」という概念がないため、日本人が英語で話す際にはこれらを意識して使う必要があります。この vital signs は「死体cadaver には認められない、まさに「生きていることを示す兆候」であり、「体温」「血圧」「心拍数」「呼吸数」などが含まれ、英語圏の臨床現場では下記のように表記することが一般的です。まずは単位を含めてこれらを声に出して読んでみましょう。

Vital Signs
 Temp: 38.3°C
 BP: 166/86 mmHg
 HR: 102/min, regular
 RR: 22/min

どうでしたか?簡単そうに思えても、全て自信を持って正しく読めたという方は少なかったのではないでしょうか?では、一つずつ確認していきましょう。

まず「体温temperature の読み方ですが、 Temp: 38.3°C は “(The body) temperature (is) thirty eight point three degrees Celsius.” となります。ここで気をつけていただきたいのが「数字が1以外の場合、単位自体も複数形となる」ということです。したがって 、1 mgone milligram のように milligram 自体は単数形になるのですが、2 mg0 mg などは、 two milligramszero milligrams のように milligram に s が付く複数形になるのです。ちなみに 0.1 mg は zero point one milligrams や oh point one milligrams という読み方よりも、さらに簡略化された point one milligrams という表現の方が一般的です。したがって 38.3°C も “thirty eight point three degrees Celsius” のように、 degree が複数形の degrees になるのです。ちなみに「摂氏」のことを centigrade と記憶されている方もいらっしゃるかもしれませんが、現在ではCelsius が使われていて、centigrade が使われることはほとんどありません。

また、米国では Celsius の代わりに 「華氏Fahrenheit が使われますが、この2つ単位の変換に苦労されている方も多いと思います。臨床場面では 「100°F が 37.8°C」、「104°F が40°C 」となることに加え、これらの周辺の温度では「 1°F が 0.5°C」となるということだけを覚えておけば、誰でも簡単に変換ができるようになります。つまり、100°F から 1°F 高い 101°F が摂氏何度になるかを考えるには、37.8°C から 0.5°C 高い 38.3°C になると考えれば良いのです。これは、体温付近の温度に関してほぼ正確に変換できる便利な法則ですので、是非覚えておいてください。

次に「血圧blood pressure ですが、 166/86 mmHg は “Blood pressure (is) one sixty six over eighty six millimeters (of) mercury.” のように over を使って読みます。166 mmHg は「水銀 mercury の高さ」という意味なので one sixty six millimeters (of) mercury のように読みます。 (この of は省略されることが普通です。)このようにmmHg は決して「ミリメートル・エイチ・ジー」のようには読みませんので注意してください。また、血圧での 166 のような数字は、 one hundred and sixty six ではなく、one sixty six のような簡略化された読み方になることにも注意してください。

高血圧」と「低血圧」は皆さんご存知の通り、それぞれ hypertensionhypotension となります。ちなみに日本では hypertension にHTという略語が使われますが、英語圏では HTN という略語が使われます。また distributive shock では皮膚は warm & dry となりますが、それ以外のhypovolemic/cardiogenic/obstructive shock では、cold & clammy というとなります。この clammy は「クラムチャウダー」として知られる clam 「二枚貝」から派生した形容詞で、「(二枚貝の中に指を突っ込んだ時に感じるように湿っぽい感じ」というイメージになります。

心拍数heart rateHR: 102/min, regular は “(The) heart rate is one oh two per minute, regular.” のように読みます。「頻脈」は「タキる」の語源となっている、tachycardia となります。この tachy- は speed という意味で、車の「タコメーター」である tachometer にも使われています。これとは逆に「徐脈」の bradycardia の brady- は、 slow という意味になります。心拍数が 60-100 の正常範囲内で、なおかつ「不整脈arrhythmia がない状態を regular rate and rhythm と表現し、英語圏の「カルテpatient note ではこの略語である RRRがよく使われます。

最後に「呼吸数respiratory rate ですが、 RR: 22/min は “(The) respiratory rate is twenty two per minute.” と読みます。「頻呼吸」は tachy- を使って tachypnea、「徐呼吸」は brady- を使って bradypnea となります。それぞれ tachypneic と bradypneic という形容詞もあり、 “He is tachypneic at 22.” のように at を使って表現することもあります。

気をつけたい数字と記号の読み方
このように「数字」や「記号」は、国際学会でのプレゼンテーションでもよく使われるにも関わらず、「読み方」を意識していない方が多い印象です。しかし意識さえすれば誰でも正しく読めるようになります。

「血小板」 platelets の検査では、9.8 × 109/L のような表記を使いますが、これは “Nine point eight times ten to the ninth power per liter” と読みます。× は “times” もしくは “multiplied by” と読み、÷ は “divided by” と読みます。乗数の読み方ですが、102は “ten squared” と、 103は “ten cubed” となり、 104は “ten to the fourth power” もしくは “ten to the power of four” となります。4乗以上はこれと同じ法則で表現するので、109は “ten to the ninth power” もしくは “ten to the power of nine” となります。

不等号が入った表現の Mg2+ < 0.5 mEq/L はどう読みますか?これは “(The serum) magnesium (level) is less than point five milliequivalents per liter.” と読みます。不等号の < は “less than” と、> は “greater than” となります。ちなみに「以下」と「以上」の記号は、英語では それぞれ のように下線が1つになり、読み上げる際にはそれぞれ、 “less than or equal to” と “greater than or equal to” のように、少し長い表現になります。

そして、日本人にはほとんど意識されずに誤って使われているのが、 ± という記号です。70 ± 9 years の正しい読み方は、 “Seventy plus or minus nine years” となります。日本語でも使われる「プラスマイナス」ではなく、 “plus or minus” のように必ず or が入るので注意してくださいね。

AAA は “triple A”。では RRRはどう読むの?
では次に「略語」の読み方を確認しましょう。

そもそも「略語」は英語で何というのでしょう。多くの医師や医学生に馴染みのある abbreviation ですが、これは doctor を Dr. と短く表記する略語のことです。そして、 chronic obstructive pulmonary disease の頭文字をそのままアルファベットで COPD と表記することは、 initialism と呼びます。しかし、この abbreviation と initialism という表現は、英語圏の医師にも区別して使われることはなく、COPDSLE といった本来 initialism と呼ばれるものも全て、 abbreviations と呼ばれることが一般です。もし USMLE Step 2 CS の受験を考えているならば、こちらのファイルの14ページにある 、“common abbreviations” はしっかりと使えるようにしておくことが必要です。

この abbreviations の中で、頭文字をそのままアルファベットで読むのではなく、新たな読み方が与えられたものは acronym と呼ばれます。具体的には gastroesophageal reflux diseaseを「ガード」のように読む GERD や、「院内肺炎」と「市中肺炎」を意味する hospital acquired pneumonia と community acquired pneumoniaを「ハップ」や「キャップ」のように読む HAPCAP などが例に挙げられます。

では、どんな時に abbreviation は acronym になるのでしょうか?結論から言うと、略語が他の単語に近い場合には acronym になる傾向があります。例えば、心筋梗塞の手術である coronary artery bypass grafting の略語である CABG は野菜の「キャベツ」 cabbage に似ているために「キャベッジ」のように発音される acronym となるのです。

しかし英語は例外だらけの言語です。「腹部大動脈瘤」の abdominal aortic aneurysm の略語である AAA は “triple A” と読みますが、バイタルサインで紹介した regular rate and rhythm の略である RRR はそのまま “regular rate and rhythm” と読みます。また、 multiple endocrine neoplasm はそのまま MEN 「メン」だけで表現すると伝わりづらいので、「メン」という読み方はそのままに、 MEN syndromes のように呼ばれることが一般的です。

このような正しい略語や読み方を確認するために一番良い方法は、 YouTube などの動画で、その略語が実際にどのように読まれているかを確認することです。こうすることで略語の正しい読み方を確認することができるだけでなく、「伝染性単核球症」 infectious mononucleosis が “mono” と、「褐色細胞腫」 pheochromocytoma が “pheo” と呼ばれたり、「ヘマトクリット」hematocrit が日本語の「ヘマト」ではなく “crit” のように呼ばれていることがわかるようになります。

このように、実際にどのように読まれているかを確認すると、「辞書に載っている読み方とは異なる読み方もある」ということがわかってきます。

内転」と「外転」は英語でそれぞれ adductionabduction となり、前者は「アクション」、後者は「アブクション」と発音されます。しかしこれらは似ているため、臨床現場では明確に区別する目的で、前者は「エー・ディー・クション」、後者は「エー・ビー・クション」のように発音されることがあるのです。日本語で「私立」を「しりつ」ではなく、「わたくしりつ」のように発音するのと同じ理由です。

同じように、「甲状腺機能亢進症」「甲状腺機能低下症」や「高血圧」「低血圧」を表現する際には、hyperthyroidism/hypothyroidism や hypertension/hypotension のように hyper-/hypo- を使いますが、これらは英語の母国語話者でも聞き分けるのに注意が必要になります。したがって臨床現場で発音する際には hyperthyroidism/hypothyroidism や hypertension/hypotension という本来の部分にアクセントを置くのではなく、hyperthyroidism/hypothyroidism や hypertension/hypotension の部分にアクセントを置いて発音する場合があります。これらは辞書的には「誤ったアクセント」となりますが、正確に伝える必要がある臨床現場では実際に使われている表現なのです。

こういった正しい読み方は、「書き言葉」の学修だけで習得するのは困難です。幸いなことに最近では英語の動画を視聴できる環境が整っています。語学学修では「聞くスキル」の習得が最初のステップです。是非皆さんも「書き言葉」だけでなく、「話し言葉」を通して正しい読み方を確認する習慣を身につけてください。

Anion gap は「アニオンギャップ」?
では最後に、注意が必要な「発音」についていくつかご紹介します。

日本語には「カタカナ」という便利な表記があり、これによって外国語を日本語に柔軟に取り入れてきました。しかし外国語学修に限って言えば、このカタカナの使用は障害にもなります。

日本語でも使われる「レニン」や「アニオンギャップ」は元々日本語ではありません。カタカナの「レニン」という発音では、 renin ではなくチーズの発酵に使われる酵素の renninのように聞こえます。意外かもしれませんが、英語での renin は「リーニン」に近い発音となるのです。また「陰イオン」を意味する anion は、英語では「ナィオン」のように発音します。そして日本語では「カチオン」と発音される「陽イオン」を意味する cation も、「カァタィオン」のような発音になります。

このようにカタカナに慣れてしまうと、 latex を「ラテックス」、ibuprofen を「イブプロフェン」、gynecology を「ギネコロジー」のように英語でも発音してしまい、本来の「レィテックス」「アィビュプロフェン」「ガィネコロジィ」のような発音ができなくなってしまうのです。

もちろん母国語に近づけて発音するのは日本人だけではありません。英語圏の人は 「空手」karate や「酒」 sake を「カラァティ」や「キィ」 のように「英語っぽく」発音しますし、本来は日本語での発音の方が本来のものに近い「プルキンエ」Purkinje も、英語に引きつけて「プゥキンジィ」のように発音してしまいます。ですからカタカナの発音は、英語の発音とは全く別のものとして使う意識が重要になります。

もう一つのカタカナの弊害は「異なる発音を同一視してしまう」ということです。英語の rash/rush/lash/lush はカタカナでは全て「ラッシュ」ですし、flash/flushも全く同じ「フラッシュ」となってしまいますが、これらは全て異なる発音です。また多くの日本人が同じように発音するear と year も、英語では全く違う発音になります。

こういった単語をしっかりと区別して発音できるようになると、これらの単語がそれぞれ異なって聞こえてきます。つまり、正しい発音ができないと正しい聞き取りができないのです。ただこのような発音の話となると、「大人になってから身につけるのは無理!」「発音に注意をするのは学習効率が低いのでカタカナ英語でも十分!」という反論があります。確かに正しい発音はコミュニケーションを取る上で優先順位は高くはありませんが、違いを意識することで、確実にこれらの音を区別することができるようになります。

このようにカタカナは便利である一方、外国語の学修においては障害ともなります。そしてカタカナの多用は日本語自体にも重大な副作用をもたらします。

外国人の方が日本語を学ぶ上で困難な要素として、このカタカナが挙げられます。「評価する」と言えばわかるのに「アセスメントする」と言われると、それが英語の assessment と日本語の「する」の組み合わせとは理解できません。また「至急で」と言えば伝わる場面で「アズ・スーン・アズ・ポッシブルで」のような表現をカタカナの発音でされると、文章の意味が全くわからなくなってしまいます。

日本の医療現場の国際化に伴い、患者さんだけでなく医療者としても日本語を母国語としない方達が増えています。そのような医療現場では医療者全員が「やさしい日本語」を使うことが重要になります。日本の医療現場は、外国語から派生した「専門用語」が飛び交っています。その結果「ショックバイタル」といった、日本でしか通用しない和製英語が生まれ、「タキる」「アポる」「コアグる」「ステる」といった、もう何語なのかわからなくなってしまった隠語が氾濫しています。

日本語話者が本来最も注意すべきは、「正しい日本語」を使うということです。英語が堪能な河野防衛相が「クラスター」や「ロックダウン」といったカタカナの多用に苦言を呈したように、外国語が得意な人は母国語の使い方も一流です。外国人の患者さんや医療者から、「あなたの日本語はわかりやすいですね。」と言われることこそが、英語学修において最も近道なのかもしれません。

さて、そろそろカップのコーヒーも残りわずかです。最後に本日ご紹介したポイントをまとめておきます。

 • 数字が1以外の場合、単位自体も複数形となる
 • Temp: 38.3°C
  “(The body) temperature (is) thirty-eight point three degrees Celsius.”
 • BP: 166/86 mmHg
  “Blood pressure (is) one sixty-six over eighty-six millimeters (of) mercury.”
 • HR: 102/min, regular
  “(The) heart rate is one oh two per minute, regular.”
 • RR: 22/min
  “(The) respiratory rate is twenty-two per minute.”
 • 9.8 × 109/L
  “Nine point eight times ten to the ninth power per liter”
 • Mg2+ < 0.5 mEq/L
  “(The serum) magnesium (level) is less than point five milliequivalents per liter.”
 • 70 ± 9 years”
  “Seventy plus or minus nine years”
 • Abbreviation: 本来はdoctor を Dr. と短く表記する略語のことだが、COPD や SLE といった本来 initialism と呼ばれるものとしても使われる
 • Acronym: GERD やHAP、CAPなど、頭文字をそのままアルファベットで読むのではなく、新たな読み方が与えられたもの
 • 臨床現場では abduction/adduction を明確に区別するため、「エー・ディー・クション」「エー・ビー・クション」のような辞書に載っていない読み方をする場合がある
 • カタカナの発音と英語の発音は大きく異なる場合がある
 • 正しい発音ができると正しい聞き取りができるようになる
 • 正しい読み方と発音は YouTube などの動画を使って確認する
 • 日本語を話す時にはカタカナを多用せず、正しい日本語を使うように心がける

では、またのご来店をお待ちしております。

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国際福祉大学医学部 医学教育統括センター 准教授 押味 貴之

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