Menu 25 既往歴・手術歴・家族歴に関する英語表現

2021/04/01

こんにちは。「医学英語カフェ」にようこそ!

ここは「コーヒー1杯分」の時間で、医学英語にまつわる話を気軽に楽しんでいただくコーナーです。

本日のテーマは「既往歴・手術歴・家族歴に関する英語表現」。

英語での医療面接で最も重要視されるのは、現病歴 History of Present Illness (HPI) ですが、正しく診断をするためには HPI 以外の項目も重要となります。その中でも「既往歴Past Medical History (PMH) や「手術歴Past Surgical History (PSH)、そして「家族歴Family History (FH) には、知っていそうで意外と知らない英語表現もあるので注意が必要です。

そこで今月は、既往歴・手術歴・家族歴に関する英語表現をご紹介します。

気をつけたい「大きな病気」と「指摘する」の英語表現
英語での医療面接ではこちらでご紹介している通り、下記の項目に沿って質問していくのが一般的です。

  Chief Complaint (CC)
  History of Present illness (HPI)
  Past Medical History (PMH)
  Past Surgical History (PSH)
  Medications/Drug History (DH)
  Allergies
  Family History (FH)
  Social History (SH)
  Review of Systems (ROS)

ここでの History は略語として使われる際には Hx として表記される場合もあり、略語の PMH/PSH/DH/FH は PMHx/PSHx/DHx/FHx のようにも表記されます。

ではまず、「既往歴Past Medical History (PMH/PMHx) での英語表現から確認していきましょう。

日本語では「今までに何か大きな病気をされたことはありませんか?」と尋ねることが多いのですが、これを英語で尋ねる際には注意が必要です。これをそのまま “Have you ever had any major illness before?” のように尋ねてしまうと、患者さんの主観によっては「本来ならば答えて欲しい重要な既往歴」を “major illness” として認識せず、患者さんが言及しない可能性があります。ですから英語圏での医学教育では「大きな病気」として限定せず、 “Have you ever had any problems with your health in the past?” のように「何か健康に関する問題」といった表現を使って尋ねることが推奨されています。

PMH ではこれ以外にも「健康診断で何か異常を指摘されたことはありませんか?」という質問があります。ここでは特に「指摘する」の表現に注意をしてください。多くの日本人医師が「(異常所見や診断を)指摘する」を point out という動詞を使って表現しますが、この表現は完全に誤りでとても奇妙に聞こえます。この場合の「指摘する」には note という動詞が使われて、 “Has anything ever been noted as being abnormal during a routine health checkup?” のように表現されますので注意してください。

また PMH では、「外傷」の既往も重要になります。「外傷」は英語では trauma となりますが、日本語の「トラウマ」と同様に英語の trauma にも psychological trauma というイメージがあるため、患者さんに「何か怪我をしたことはありますか?」と尋ねたい場合には “Have you ever had any injuries in the past?” のように injury という表現を使う方が良いでしょう。

「骨にヒビが入る」は英語で何と言う?
患者さんに health problemscheckup abnormalities を尋ねた場合、患者さんは「医学用語medical terms ではなく、「一般用語lay terms を使って答えます。

ですから「心筋梗塞」は acute myocardial infarction (AMI) ではなく、 heart attack と表現されますし、「脳卒中」も cerebrovascular accident (CVA) ではなく、stroke と表現されます。「高血圧」は hypertension よりも high blood pressure と呼ばれることが多く、「高コレステロール血症」も hypercholesterolemia ではなく high cholesterol と呼ばれます。

患者さんが diabetes と言った場合、それはほぼ間違いなく「糖尿病diabetes mellitus (DM) のことであり、「尿崩症diabetes insipidus であることはまずないと思いますが、患者さんが arthritis と言った場合には注意が必要です。「慢性関節リウマチ」の rheumatoid arthritis (RA) も、「変形性関節症」の osteoarthritis (OA) のどちらも一般的には、 arthritis と呼ばれますので、患者さんがどちらの意味で使ったのかを確認する必要があります。

患者さんが injuries に関して答える場合にも lay terms が使われます。「骨折」は bone fracture の他に broken bone とも表現されます。「毛髪骨折hairline fracture は日本語では一般的に「骨にヒビが入る」と呼ばれますが、英語では “crack/break in a bone” のように表現されます。

これら以外にも下記のような外傷に関する表現は、英語圏では一般の方が普通に使う表現ですので、是非覚えておいてください。

 捻挫sprain
 むち打ち症whiplash
 前十字・後十字・内側側副・外側側副靱帯損傷ACL/PCL/MCL/LCL tear
 •「半月板損傷meniscus tear

「手術」は英語で何と言う?
では次に、「手術歴Past Surgical History (PSH/PSHx) での英語表現を見ていきましょう。

そもそも「手術」は英語で何と言うのでしょう?「そんなの surgery に決まっているじゃない。」と思われる方も多いと思いますが、実は surgery には色々な意味があります。

英語の surgery には元来、「手で行う作業」という意味があります。したがって「外科医」を表す surgeon には、「手で作業をする人」という意味があり、その昔、診断をせずに歯を抜いたり、傷ついた手足を切断したり、瀉血(「しゃけつ」= 血を抜くこと)をしたり、髪を切ったり髭を剃ったりする「床屋」を表す barber surgeon として使われていました。これに対して身体の中でどのようなことが起こっているかを診断し、患者に寄り添う「癒す人」が physician と呼ばれ、これが現在の「内科医」の語源となっています。現在では surgeon も physician も「医師」として同じ医学教育を受けており、米国ではどちらも Dr. (surname/姓) と呼ばれますが、英国では「内科医」を Dr. (surname/姓) と呼び、「外科医」をMr./Ms. (surname/姓) と呼んで区別しています。
このように surgery は現在「外科」という意味で使われていますが、一般には「手術」という意味でも使われています。ですから「これまで手術をしたことはありますか?」は “Have you ever had any surgeries in the past?” のように表現されます。しかし、医学論文などフォーマルな書き言葉として「手術」を表現する際には注意が必要です。医学論文の書き方マニュアルとして有名な AMA Manual of Style では 「surgery は「外科」として使い、「手術」には surgery ではなく operation を使うべき」と推奨されています。したがって「これまで手術したことはありますか?」は厳密には、 “Have you ever had any operations?” となるべきなのです。つまり「術前術後の処置を含めた外科治療全体」が surgery であり、「手術そのもの」は operation として区別するべきだと言われているのです。したがって「術後の経過は順調でした」と書き言葉で表現したい場合、 “The postsurgical course was uneventful.” ではなく、 “The postoperative course was uneventful.” と表現する必要があるのです。
この他、米国では外来患者を診察する「診療所」のことを clinic 以外にも office と呼びますが、英国ではこれも surgery と呼びます。ですから “I visited my GP’s surgery yesterday.” と患者さんが言った場合、この surgeryは「外科」や「手術」ではなく「(一般開業医の)診療所」という意味になるのです。この他にも英国では「政治家との面会」という意味でも surgery が使われます。このように英語の surgery には「外科」や「手術」以外にも色々な意味があるということを覚えておいてください。

“Keyhole operation” って何のこと
「手術歴」Past Surgical History (PSH/PSHx) でも患者さんは PMH/PMHx と同様に medical terms を使わずに答えることが一般的です。もちろん患者さんによっては「虫垂切除)」を、 appendectomy のような medical term を使って表現する場合もありますが、「扁桃切除)」や「胆嚢切除)」などを tonsillectomycholecystectomy といった、 medical term で表現する人は稀であり、多く場合は下記のように “got/had (the organ) removed/taken out” という表現を使うことが一般的です。

 • I got/had my appendix removed/taken out. (appendectomy)
 • I got/had my tonsils removed/taken out. (tonsillectomy)
 • I got/had my gallbladder removed/taken out. (cholecystectomy)

また「腹腔鏡」 は「腹壁」を意味する laparo- を使って laparoscope と呼ばれ、「腹腔鏡を使った手術」は laparoscopic surgery/operation となるのですが、一般的には「鍵穴のような小さな穴を通して行う手術」というイメージの keyhole operation という表現が使われます。

これ以外にも下記の表現は英語圏の患者さんがよく使いますので、覚えておきましょう。

 緊急手術emergency surgery/operation
 待機手術elective surgery/operation
 日帰り手術day case surgery/operation
 観血的・開胸・開腹手術open surgery
 大腿骨頭置換術hip replacement or hip surgery/operation (hip arthroplasty)
 •「帝王切開C-section (caesarean section)

患者さんは手術以外の理由で過去に「入院hospitalization を経験したかもしれないので、“Have you ever been hospitalized?” や “Have you ever stayed at a hospital?” といった質問をする必要がありますが、この場合には患者さんの手術歴での回答を踏まえた上で質問する必要があります。もし、 “Have you ever had any surgeries in the past?” という質問に、患者さんが “I had my gallbladder taken out two years ago.” のように回答したならば、 “Have you had any other surgeries?” や、 “Other than the surgery (Besides the surgery), have you ever been hospitalized?” のように質問するようにしましょう。

「ご両親はご健在ですか?」は英語で何と言う?
では最後に「家族歴Family History (FH/FHx) での表現をみていきましょう。

「既往歴」や「手術歴」、そして「内服歴」や「アレルギー歴」などは患者さんにとっても「お医者さんに聞かれて当然」と認識されますが、「家族歴」や「社会歴」などは患者さんによっては、「そんなことも聞かれるの?」と感じる方もいらっしゃるので、最初に “Now I would like to ask about the health of your family members.” といった簡単な transition を伝えると良いでしょう。

ご両親はご健在ですか?」と聞きたい場合、 “Are your parents still alive?” だとやや直接的過ぎる感じがありますので、もし患者さんが「両親がまだ存命していると考えられる比較的若い年齢」であるならば、 “Are your parents well?” という質問が適切です。これに対して患者さんが比較的高齢であるならば “Are your parents still with us?” のように “with us” という表現を使うと印象が良くなります。

ご家族の中でご病気の方はいらっしゃいますか?」には、 “Does anyone in your family have any health problems?” という表現を使いましょう。また日本語ではあまり尋ねない質問ではありますが、英語圏では “Do any health problems run in your family?” という質問を使って遺伝性疾患の有無を確認することが一般的です。

もし家族歴で遺伝性疾患が疑われる場合、pedigree と呼ばれる「家系図」を作成します。そうすることでその遺伝性疾患の mode of inheritance が下記のいずれによるのかを判定することが可能となります。

 「常染色体優性遺伝」autosomal dominant (AD) inheritance
 「常染色体劣性遺伝」autosomal recessive (AR) inheritance
 「伴性優性遺伝」X-linked dominant (XD) inheritance
 「伴性劣性遺伝」X-linked recessive (XR) inheritance
 「ミトコンドリア遺伝」mitochondrial inheritance

この他にも、家族内で特定の疾患を持つ人がいるかどうかを知りたい場合には、“Does anyone in your family have high blood pressure?” のような質問が有効ですし、遺伝性疾患や感染症などが疑われる場合には、 “Does anyone in your family have similar symptoms?” という質問が有効です。

これらを聞き出す場合、当然ですが家族に関する英語表現はとても重要です。

 「母親」mother/mom
 「父親」father/dad
 「姉妹」sister
 「兄弟」brother
 「祖母」grandmother/grandma
 「祖父」grandfather/grandpa
 「伯母・叔母」aunt/aunty
 「伯父・叔父」uncle
 「姪」niece
 「甥」nephew
 「いとこ」cousin

日本では「年上」「年下」という情報が重要となり、「親の姉/」は「伯母/伯父」、「親の妹/」は「叔母/叔父」のように区別されますが、英語では単純に aunt/uncle となります。「姉妹」「兄弟」に関しても同様で、 big/older sister/brotherlittle/younger sister/brother という表現は、日本語ほど厳密に言及されない印象があります。

上記のような基本的な表現に加え、医療面接の中では下記のような表現も使われますので、知らなかった方はこれを機会に是非覚えておいてくださいね。

 「母方の」maternal
 「父方の」paternal
 「継母(父親が再婚したことによってできた新しい母親)」stepmother
 「継父(母親が再婚したことによってできた新しい父親)」stepfather
 「義母(配偶者の母親)」mother-in-law
 「義父(配偶者の父親)」 father-in-law
 「義理の家族(配偶者の家族)」 in-laws
 「同居している近親者」 next of kin

さて、そろそろカップのコーヒーも残りわずかです。最後に本日紹介した表現をまとめておきます。

Past Medical History (PMHx)
 • “Have you ever had any problems with your health in the past?”
 • “Has anything ever been noted as being abnormal during a routine health checkup?”
 • “Have you ever had any injuries in the past?”

Past Surgical History (PSHx)
 • “Have you ever had any surgeries in the past?”
 • “Have you ever had any operations in the past?”
 • “Have you ever been hospitalized?”
 • “Have you ever stayed at a hospital?”
   o “I got/had my appendix removed/taken out.” (appendectomy)
   o “I got/had my tonsils removed/taken out.” (tonsillectomy)
   o “I got/had my gallbladder removed/taken out.” (cholecystectomy)
   o “I had a keyhole operation to have my gallbladder removed/taken out.” (laparoscopic cholecystectomy)
   o “I had a hip replacement.” (hip arthroplasty)
   o “I had a C-section.” (caesarean section)

Family History (FHx)
 • “Now I would like to ask about the health of your family members. (Would that be all right with you?)”
 • “Are your parents well?” (for young or middle-aged patients)
 • “Are your parents still with us?” (for elderly patients)
 • “Does anyone in your family have any health problems?”
 • “Do any health problems run in your family?”
 • “Does anyone in your family have (specific disease)?”
 • “Does anyone in your family have similar symptoms?”

 

では、またのご来店をお待ちしております。

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国際福祉大学医学部 医学教育統括センター 准教授 押味 貴之

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