Menu 56 これを英語で言ってみよう!(初級編)

2023/11/01

こんにちは。「医学英語カフェ」にようこそ!

ここは「コーヒー1杯分」の時間で、医学英語にまつわる話を気軽に楽しんでいただくコーナーです。

本日のテーマは「これを英語で言ってみよう!」の初級編です。

お座りください」や「わかりましたか?」といった基本的な会話表現でも、これらを “Sit down, please.” や “Do you understand?” のように表現してしまうと失礼に聞こえてしまいます。また「ヒリヒリ」「ジンジン」「ブーン」などの「オノマトペ」を英語でどのように表現するかとなると、皆目見当もつかないという方も多いと思います。

そこで今回は、こういった英語で表現する際に注意が必要なものをいくつかご紹介します。1回目の今回は「初級編」です。

意外と知らない?失礼になる英語表現
まずはウォームアップです。下記の日本語を英語で表現してみてください。

 日本語を話せますか?
 どうぞお座りください。
 わかりましたか?
 わかりません。

どれも簡単そうに思われますが、いかがでしょうか?

日本語を話せますか?」と言いたい場合、英語では “Can you speak Japanese?” とは言わず、 “Do you speak Japanese?” と表現します。Can を使った表現もそれほど失礼なわけではないのですが、「日本語を話す能力があるのですか?」のようなニュアンスが含まれます。話せない場合には can を使って “I can’t speak Japanese.” のように表現しますが、話せるかどうかを尋ねる際には “Do you speak Japanese?” のように表現するのが自然です。

注意していただきたいのが「どうぞお座りおかけください」の英語表現です。これを “Sit down, please.” と表現すると、「いいから座れ」のように上から目線で話しているように聞こえてしまいます。この sit down という表現自体がやや乱暴な印象を与えるものですので、丁寧に言いたい場合には have a seattake a seat のような表現を使い、“Please have/take a seat.” のように表現しましょう。

同じように「わかりましたか?」を “Do you understand?” と表現すると、上から目線で「わかったのか?」と言っている印象になります。この場合には “Does it make sense?” と表現するのが適切です。

そして今回特に強調したいのが「わかりません」の英語表現です。授業で先生に指名された時や学会で質問を受けた時、そして外国人患者さんから質問を受けた時で答えがわからない場合に “I don’t know.” とは言わないでください。言い方にもよるのですが、この表現を使うと “I don’t care.” というぶっきらぼうな印象を与えます。「わかりません」を英語で言いたい場合には “I’m not sure.” という表現を使いましょう。これが最も自然で丁寧な表現となりますので、これまで普通に “I don’t know.” と言っていた方は、それを全て “I’m not sure.” に言い換えるように意識してください。

「ズキズキ」?「ジンジン」?痛みに関する英語表現
大学院で医療通訳を指導していると、「痛み」に関する英語表現に関して多くの質問をいただきます。ここでは医学英語を学んでいる方が特に注意すべき「痛み」に関する英語表現をまとめてご紹介します。まずは下記の日本語を英語で表現してみてください。

 腰が痛いです。
 膝を痛めました。

腰が痛いです」としては “I have a pain in my low back.” や “I have an ache in my low back.” などが思いつくでしょう。この pain と ache の意味は異なり、pain には「急性で鋭い痛み」、そして ache には「慢性で鈍い痛み」というイメージがあります。これ以外にも hurt という動詞を使って “My low back hurts.” のように表現することもできます。むしろ「痛いなぁ」のように実感を込めて表現する場合には、この hurt を使って “My low back hurts.” と表現する方が自然です。

膝を痛めました」を英語で表現するとなると、多くの方が “I injured my knee.” のように injure という動詞を使います。もちろんこれも正しい表現なのですが、これだと靭帯や半月板を損傷したような重症のように聞こえてしまいます。「ちょっと痛めた」のような軽症の場合も含むニュアンスを表現したい場合、先ほど紹介した hurt を使って “I hurt my knee.” と表現する方が自然です。この表現も意外と思いつかない方が多いので覚えておいてください。

痛みに関する表現には「ズキズキ」や「ヒリヒリ」といった「オノマトペ」も含めて実に多彩なものが存在します。まずは何も参照せずに下記の表現を英語にしてみてください。

 バットで殴られたような痛み
 さしこむような痛み
 疼くような痛み
 チクッとした痛み
 ズキズキする痛み
 ヒリヒリする痛み
 ジンジンする痛み
 ピリピリする痛み

どうでしょう?いくつ思いつきましたか?

日本語の「バットで殴られたような痛み」という表現は「クモ膜下出血」の際によく使われる表現ですが、英語では喩えが変わります。英語圏で subarachnoid hemorrhage (SAH) の頭痛を表現する場合には thunderclap headache雷に撃たれたような頭痛」という表現が使われます。これは「突然起こる」と「痛みの程度が0から10 くらいに急激に上昇する」という SAH の頭痛の特徴を的確に描写している表現で、英語圏ではよく使われます。日本語の表現を直訳した “a pain like being hit by a baseball bat” という表現を使っても言いたいことは伝わりますが、あまり自然な表現とは言えません。

さしこむような痛み」は cramping pain や crampy painとなります。この cramp には「キューっと締めつける」というイメージがあり、名詞の cramp は “I had a cramp in the calm.”「ふくらはぎがつった」 のようにも使われます。ただ女性が cramps と複数形で表現した場合、それは「生理痛」という意味になりますので注意してください。

疼くような痛み」はどのように表現しましょう?これは gnawing pain のように表現されます。gnaw の g は発音されないので gnawing は「ゥィング」のような発音になります。このgnaw は「ゆっくりと咀嚼する」というイメージの動詞ですので、gnawing pain は「はっきりと自覚できないが消失することのない痛み」というイメージになります。まさにこれが日本語の「疼くような痛み」に相当するわけです。

チクッとした痛み」はいかがでしょう?pain を使えば pricking pain のように表現できますが、先述したように pain という表現自体に結構強い痛みというニュアンスがあるので、「採血blood draw/phlebotomy の際に患者さんに「チクッとしますよ」と言いたい場合には、“You might feel a little pinch.” のように pinch という名詞を使うといいでしょう。

ズキズキする痛み」の英語表現としては throbbing pain が最も頻繁に使われます。これは拍動に連動する痛みの英語表現ですので、「ガンガンする」や「バクバクする」など、拍動に連動するその他のオノマトペも throbbing と表現できます。もちろん英語にも拍動に連動する痛みの形容詞としては poundingpulsating など複数あるのですが、throbbing が最もよく使われます。

ヒリヒリする痛み」の英語表現は少し難しく感じられたかもしれませんね。これは英語では stinging pain のように表現されます。動詞の sting を「刺す」というイメージで覚えている方も多いと思いますが、 “My eyes are stinging.” には「目がヒリヒリします」「目がしみます」のような意味があるのです。ですから「しみますか?」と聞きたい場合には “Does it sting?” のように表現します。

ジンジンする痛み」はどうでしょう?そもそもこの「ジンジンする」というオノマトペの解釈には個人差もあると思いますが、「電気が走るような痛み」や「ピリピリする痛み」のように解釈する場合、英語では tingling pain のようになります。そしてこの tingling は pins and needles とも表現されます。よく間違えられるのですが、この pins and needles は形容詞ですので、 “I feel pins and needles in my hands.” のように have ではなくて feel という動詞を使うようにしてください。

日本語のオノマトペにはここで紹介した以外にも数多くありますが、その解釈には地域差や個人差もあります。患者さんが訴える痛みの性状を理解することは大切ですが、主観的な表現の理解には限界もあります。患者さんが使う表現がよく理解できない場合には、 “Is it a sharp pain or dull pain?” 「鋭い痛みですか、それとも鈍い痛みですか?」のような選択肢を提示して、どちらに近い痛みなのかを探ることをお勧めします。

“I’m buzzed.” の意味は「バズってる」じゃないの?
もうお気づきになった方も多いと思いますが、日本語のオノマトペに相当する英語表現は、動詞から派生した形容詞であることが多いのです。ですから肉が焼ける際の「ジュージュー」も、英語ではsizzling のように動詞から派生した形容詞となるのです。

ではその点を意識して、下記の擬音語を英語で表現してみてください。

 リーン
 ブーン
 シュー
 ゴー

どれも「耳鳴」で聞こえる音を表現する際のオノマトペですが、いかがでしたか?

耳鳴」の医学英語は tinnitus となります。その発音は「ティニィタス」(英国)や「ティニィティス」(米国)が一般的ですが、やや古い世代には「ティナィタス」とも発音されます。この tinnitus は一般的には ear ringingringing in the ears と表現されますが、この ringing は日本語の「リーン」に相当します。ただ実際に tinnitus で聴こえる音は多彩であり、日本語のオノマトペでは「ブーン」「シュー」「ゴー」のように表現されます。そしてこれらは英語ではそれぞれ buzzing, hissing, and roaring のような表現となります。

日本語でも「バズる」という表現が定着しましたが、英語の buzz には虫の羽音のように「ブーンという音がなる」というイメージがあります。

では英語で “I’m buzzed.” と表現した場合、これは「バズった」という意味になるのでしょうか?

実はこれは「少し酔っ払ったよ」という意味なのです。つまり buzzed は「ほろ酔い状態」という意味で使われる場合もあるのです。「酔っ払っている」というと多くの方が drunk という形容詞を思いつきますが、実はこれはかなり酔っ払った「酩酊状態」を意味します。そしてさらに酔っ払うと「泥酔状態」となりますが、こうなった状態を英語では wasted と表現します。意外に思われるかもしれませんが、「バズる」の英語表現は get buzzed ではありません。英語では「バズる」をウイルスの形容詞である viral を使って go viral と表現します。

いかがでしたか?どれもシンプルな表現ばかりですが、英語で表現しようとすると難しく感じた方も多かったのではないでしょうか?また機会がありましたら「中級編」もご紹介しますのでお楽しみに。

さて、そろそろカップのコーヒーも残りわずかです。最後に今回ご紹介した英語表現をまとめておきます。

 日本語を話せますか? → Do you speak Japanese?
 どうぞお座りください。→ Please have/take a seat.
 わかりましたか? → Does it make sense?
 わかりません。 → I’m not sure.

 バットで殴られたような頭痛 → thunderclap headache
 さしこむような痛み → cramping pain
 疼くような痛み → gnawing pain
 チクッとした痛み → pinch
 ズキズキする痛み → throbbing pain
 ヒリヒリする痛み → stinging pain
 ジンジンする・ピリピリする痛み → tingling pain

 ブーン → buzzing
 シュー → hissing
 ゴー → roaring

 ほろ酔い状態 → buzzed
 酩酊状態 → drunk
 泥酔状態 → wasted

 バズる → go viral

では、またのご来店をお待ちしております。

「Dr. 押味の医学英語カフェ」では皆さんから扱って欲しいトピックを募集いたします。こちらのリンクからこのカフェで扱って欲しいと思う医学英語のトピックをご自由に記載ください。

国際医療福祉大学医学部 医学教育統括センター 教授 押味 貴之

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