Dr.押味の医学英語カフェ

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こんにちは。「医学英語カフェ」にようこそ!

ここは「コーヒー1杯分」の時間で、医学英語にまつわる話を気軽に楽しんでいただくコーナーです。

本日のテーマは「耳に関する英語表現」です。

皆さんは “Play it by ear.” と聞いて、その意味がわかるでしょうか?また「耳小骨」や「真珠腫性中耳炎」などの耳に関する医学英語を正しく使えますでしょうか?

USMLE Step 1 でも耳に関する otology は記載内容が少ないのですが、重要な感覚器である耳に関する様々な英語表現は医学生・医師にとっては必須と言えます。

そこで今月は、「耳に関する英語表現」を色々とご紹介したいと思います。

区別して発音できる? Ear と Year
まずは基本から確認しましょう。「」は英語では ear です。そしてこの発音は year とは異なります。どちらもカタカナではほとんど区別されずに発音されていますが、英語の発音は異なります。「自分で発音できない音は聞いても区別できない」と言われますので、ear と year の発音の区別ができない人はこちらのようなYouTube動画などを見て区別できるようにしておきましょう。

また ear は左右あるので ears のように複数形で表現することが一般的です。ですから耳に装着する「イヤフォン」も earphones のように複数形で表現するのが一般的です。

知っておきたい ear を使った慣用表現
では次に ear を使った英語の慣用表現を見ていきましょう。

よく使われる idiom としては “play it by ear” というものがあります。これは「耳で聞こえた通りに演奏する = 耳コピする」というイメージから「準備しないで乗り切る」や「臨機応変に対応する」という意味で使われます。この it の代わりに this one や all that などを使って、 “Let’s play this one by ear.” や “How about we play all that by ear?” のようにも表現します。この idiom は日常会話でよく使われるものですので、知らなかった方は是非これから使ってみてください。

また all ears という idiom もよく使われます。これは「聞き耳を立てる = 聞かせてもらいたいと感じている」というイメージの idiom で、 “I’m all ears.”「聞かせて!」のように使います。この all ears も日常会話でよく使われる表現です。英語で恋バナなどをする際には是非使ってみてくださいね。

「耳介」や「外耳道」の英語表現は?
次に耳の構造を見ていきましょう。

ご存知の通り、耳は eternal/outer ear外耳」、middle ear中耳」、そして inner ear内耳」の3つの部位から成り立ちます。

ではまず external/outer ear から見ていきましょう。
この outer ear には「耳介」「外耳道」「鼓膜」が含まれます。

耳介」は英語では auricle もしくは pinna と表現します。どちらも医学英語であり、pinna は「ナ」のような発音になります。そして一般的な表現である「耳たぶ」の英語は earlobe ですが、専門的な表現である「耳垂」の英語は lobule となり、「ビュゥ」のように発音します。

外耳道」の医学英語は external auditory meatus となります。この meatus とは passage を意味する医学英語であり、「ミエィタス」のような発音となります。ただ医学生や医師であっても external auditory canal のように canal を使う方が多く、一般的には ear canal と呼ばれます。先ほど「イヤフォン」は earphones と紹介しましたが、これは外耳道まで挿入するものであり、外耳道の手前にある concha耳甲介(腔)」と呼ばれる凹みに引っ掛ける形式のものは earbuds と呼ばれます。ちなみに concha の発音は「ンカ」のようなものであり、bud とは「つぼみ」という意味です。

この外耳道に炎症があると otitis externa外耳道炎」と呼ばれます。その場合には耳から分泌物が流れ出る「耳漏」が生じますが、これを otorrhea と呼びます。患者さんにこの otorrhea の有無を尋ねる際には “Have you noticed any discharge coming from your ears?” と表現すると、external auditory meatus からの分泌物の有無を尋ねることができます。そして “Have you noticed any discharge around your ears?” と表現すると、広く耳周囲の分泌物の有無を尋ねることができます。

external auditory meatus の問題として「耳垢が詰まる」というものがありますが、これを一般的には earwax buildupearwax blockage のように表現します。「耳垢」の医学英語は cerumen ですので、これに「固着」を意味する impaction を合わせて、医学用語である「耳垢栓塞」 を英語では cerumen impaction と表現します。ちなみに「耳かき」に相当するものは英語圏にはありません。耳掃除に使われる「綿棒」は、英語圏では商標名である Q-tips と呼ばれることが一般的です。

鼓膜」は医学英語では tympanic membrane ですが、患者さんは eardrum という一般英語を使います。そして external auditory meatus の観察として otoscope耳鏡」を使った otoscopy耳鏡検査」がありますが、これは主に tympanic membrane の視診が目的となります。外耳道側から観察される tympanic membrane は「凹んでいる」ように見えます。このような「」という形容詞を英語では concave と表現します。ですから赤血球のように「両面が凹」という形状は biconcave と表現します。これとは逆に「」という形容詞は convex となります。

知っておきたい耳小骨の一般英語表現
次に middle ear の構造物を見ていきましょう。
この middle ear には「耳小骨」と「耳管」が含まれます。

耳小骨」とは eardrum の振動を増幅する3つの小さな骨で、英語では auditory ossicles もしくは単純に ossicles と呼ばれます。そしてこの3つの骨にはそれぞれ医学英語と一般英語が存在します。

鼓膜に付着している「ツチ骨malleus は、「金」や「木」の「つち)」に形が似ているので、一般的には hammer と呼ばれます。

真ん中の耳小骨である「キヌタ骨incus は、金具の加工に使われる金床に形が似ているところから一般的には anvil と呼ばれます。(「トムとジェリー」でよくトムが潰されていた黒く重たい鉄の塊が anvil です。イメージできない方は Google で anvil のイメージ検索をしてみてください。)日本語の「キヌタ = きぬた」はこの anvil を翻訳した表現だと思いますが、厳密に言えば日本語の砧と英語の anvil は同じものではありません。

内耳に付着している「アブミ骨stapes は、乗馬の際にむ金具である「あぶみ)」に形が似ているために stirrup とも呼ばれます。ちなみに「内診pelvic exam などで足を乗せる際に用いる stirrup は、左右で対になっているので stirrups と複数形でされます。突然大きな音が聞こえても acoustic reflex音響反射」によって inner ear にその音が伝わらないようになっているのですが、それは stapedius reflexアブミ骨反射」によるものです。そして stapedius muscleアブミ骨筋」は facial nerve顔面神経」によって支配されていますので、facial nerve paralysis顔面神経麻痺」ではこの stapedius reflex が機能せずに hyperacusis聴覚過敏」になってしまいます。

耳管」とは middle earnasopharynx鼻咽頭」を結ぶ細い管で、英語では eustachian tube もしくは単純に auditory tube と呼ばれます。小児の場合はこれが成人と比較して shorter, wider and more horizontal ですので、upper respiratory tract infection (URTI)「上気道炎」を引き起こす virus や bacteria が middle ear に侵入して後述する中耳炎を簡単に引き起こすのです。プールに入って中耳炎となるのもこの eustachian tube を介した感染が原因であり、external ear からの感染ではありませんのでご注意を。

「中耳炎の一般英語 は ear infection である」は正しいの?
ではここで middle ear の代表的な疾患である「中耳炎」の英語表現を見ていきましょう。

耳炎」は「」を意味する oto– と「炎症」を意味する –itis を組み合わせて otitis となるので、「中耳炎」は otitis media となります。この otitis media の中でも「急性中耳炎」である acute otitis media (AOM) は「感染症」になるので、一般的には middle ear infectionear infection と呼ばれます。「中耳炎の一般英語は middle ear infection である」と認識している方が多いのですが、厳密には「急性中耳炎の一般英語は middle ear infection である」となります。

そしてこの otitis media には acute otitis media の他にもいくつかの種類があります。

middle ear に exudate滲出液」が溜まることで起こる「滲出性中耳炎」は、英語では otitis media with effusion (OME) となります。

otitis media が慢性になると「慢性中耳炎」となりますが、これはそのまま chronic otitis media (COM) となります。このうち AOM が慢性化しているものは chronic suppurative otitis media (CSOM)慢性化膿性中耳炎」と、そして OME が慢性化しているものは chronic otitis media with effusion (COME)慢性滲出性中耳炎」となります。

日本では「真珠腫性中耳炎」はその名の通り「中耳炎」の一種として認識されていますが、英語圏ではこれを cholesteatoma(「コリスティアゥマ」のように発音)と呼んでいて、他の「中耳炎」のように otitis media という表現は使っていません。この cholesteatoma は、 overgrowth of desquamated keratin debris within the middle ear space「中耳において落屑したケラチンの断片が異常に成長していくもの」であり、英語圏の医師の多くは otitis media とは区別して認識していますので注意してくださいね。

Tonotopy って何?
耳の最深部にある inner ear の構造はどうなっているのでしょう?
この inner ear には「蝸牛」「前庭」「半規管」が含まれます。

蝸牛(かぎゅう)」は hearing の情報を伝達する感覚器で、その形が snail「カタツムリ」に似ているところから cochlear(「ックリァ」のように発音・「カタツムリ」の意味)と呼ばれます。耳の外に装着する「補聴器」の英語は hearing aids となりますが、「人工内耳」は「埋め込まれた蝸牛」というイメージがあるため、英語では cochlear implants となります。

この cochlear は部位によって異なる周波数の音を感知するようになっています。cochlear の中心部である apex に近づくと basilar membrane基底膜」は wide and flexible となるため、低い音でよく振動するようになります。これに対して cochlear の外側の入り口となる base に近づくと basilar membrane は thin and rigid となるため、高い音でよく振動するようになります。このように異なる部位によって異なる周波数の音を感知する仕組みのことを tonotopy と呼ぶのです。

前庭」と「半規管」は balance に関する情報を伝達する感覚器で、それぞれ vestibule(「ヴェスティビュゥ」のように発音) と semicircular canals と呼ばれます。

これら cochlear, vestibule, and semicircular canals は非常に複雑な形状をしているため、それを収めている空間は bony labyrinth骨迷路」と呼ばれています。そしてその内側には「膜迷路」がありますが、これは英語では membranous labyrinth となります。

しっかりと英語で診察できるようになろう!伝音性難聴と感音性難聴
では最後に、耳の症状として重要な「難聴」について確認していきましょう。

音が全く聞こえないことを英語では deafness と言います。そしてこの deafness と正常の聴力の間のことを「難聴」と言い、英語では hearing loss と表現します。

この hearing loss は external ear から middle ear までが原因の conductive hearing loss伝音性難聴」と、inner ear から中枢までが原因の sensorineural hearing loss感音性難聴」に分類されます。このうちどちらが多いのかを学生さんに尋ねると conductive hearing loss と回答する方が多いのですが、実際には sensorineural hearing loss の方が頻度が高いのです。

そしてこの sensorineural hearing loss で最も多いのが、 noise-induced hearing loss騒音性難聴」です。これは damage to stereociliated cells in organ of Corti「コルチ器の不動細胞の障害」が原因で起こる難聴であり、最初は高い音が聞き取れないことが一般的です。

次に多いのが presbycusis老人性難聴」です。presby- とは aging という意味ですので、presbyopia は「老眼」となります。この presbycusis では高い音を感知する hair cells at the cochlear base が機能しなくなることで生じるので、「高い音は聞き取りにくいが低い音は聞こえる」という状態となります。人の悪口は低い声で話すのが通常ですので、「年寄りの地獄耳」とはこの presbycusis の状態を上手く表現する「格言(?)」なのです。

この conductive hearing loss と sensorineural hearing loss を身体診察で区別する方法として、 tuning fork音叉」を使った Rinne testWeber test があります。

Rinne test(英語圏では「リネー」のように発音)では mastoid process「乳様突起」に tuning fork をつける必要があるため、下記のように患者さんに伝えます。

“I’m now going to place this tuning fork on the bone behind your ear. Please let me know whether you can hear it and when you stop hearing it. Can you hear that? Let me know when it stops.”

次にもう一度 tuning fork を耳の側に近づけて下記のように尋ねます。

“Can you hear that?”

正常の場合、耳の側に音叉を近づけても音が聞こえます。これは診察している側の耳で air conduction > bone conduction となることを意味し、これが Positive Rinne test と表記されます。Negative Rinne test となると、その側の耳で air conduction < bone conduction となり、その耳に conductive hearing loss があることが示唆されます。「検査が陽性」となると「異常がある」とイメージしがちですが、正常であっても Positive Rinne test となるということ、そして Negative Rinne test = Abnormal となるということを覚えておいてください。

Weber test では頭部の中心線に tuning fork を置いて、聞こえ方の左右差を見ます。患者さんには下記のように伝えましょう。

“I will place this tuning fork in the middle of your forehead, and you will hear a noise, is it the loudest in one ear, or the other, or in the middle?”

Weber test では音が大きく聞こえた側に conductive hearing loss があるか、あるいはその反対側の耳に sensorineural hearing loss があることが示唆されます。もし「Weber test の結果、右耳の方が大きく聞こえた」となった場合には 、“Weber test lateralized/localizes to the right ear” のように lateralize という動詞を用いて表記します。

この他にも耳に関しては tinnitus耳鳴」も重要なトピックですが、そちらに関する英語表現はこちらで詳しく解説していますので、是非ご確認ください。

さて、そろそろカップのコーヒーも残りわずかです。最後に Rinne test と Weber test の診察表現をもう一度まとめておきます。

Rinne Test
“I will place this tuning fork on the bone behind your ear. Please let me know whether you can hear it and when you stop hearing it. Can you hear that? Let me know when it stops. Can you hear that?”
Conductive Hearing Loss: Negative = Abnormal (air conduction < bone conduction)
Sensorineural Hearing Loss: Positive = Normal (air conduction > bone conduction)

Weber Test
“I will place this tuning fork in the middle of your forehead, and you will hear a noise, is it the loudest in one ear, or the other, or in the middle?”
Conductive Hearing Loss: Localizes to affected ear
Sensorineural Hearing Loss: Localizes to unaffected ear

では、またのご来店をお待ちしております。

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国際医療福祉大学医学部 医学教育統括センター 教授 押味 貴之

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