Parkinson病について大事なこと~前編~

2018/11/10

渡です。

医学雑誌を読んだり講演会に行ったりしていると、近年Parkinson病(以下PD)と言えば必ず出てくるのが
「嗅覚障害」「DATスキャン」の話であり、臨床的な重要性が極めて高いようなので
今回はPDについてお話をさせて頂きます(前・後編)。

PDはCBTでも習うような重要疾患ですが、有名なのは「振戦」ですね。
ビデオ講座でもとにかくParkinsonismを来すよ!特に振戦はめちゃ起こりやすいよ!ということは私も強調しています。
古典的にも振戦は有名ですし、今でも頻度の高い徴候であることは全く間違いないのですが、
近年PD患者の「嗅覚障害」というのが大変話題になっております。
PDと言えば、黒質ドパミン神経にLewy小体が沈着して死んでいく病気ですが、
黒質ドパミン神経のみならず、嗅球や嗅覚伝導路にもLewy小体沈着や変性がみられることが分かっており、
そのせいで嗅覚障害を来すと言われています。匂いを感じにくくなる、という感じですね。
PDの嗅覚障害がなぜここまで注目されまくっているのか、
代表的かつ国試的に重要と思われるポイントを3つお伝えしておきます。

①PD患者の9割が嗅覚障害を来すと言われているので、実は振戦以上に高頻度に認められる。
②振戦などが起こる前から見られることが多いので、PDの早期診断に役立つ。
③嗅覚低下はPDとDLBに特徴的であり、MSAやPSP、CBDなどの疾患ではあまり特徴的でない(鑑別に役立つ)

③について補足。 学生さんとお話をしていても、PDやDLBを始めとした神経変性疾患を得意にしている方はまず見たことがありませんが、
別にこれは皆さんが勉強不足だからでもなんでもなくて、
そもそも神経変性疾患というのは鑑別が極めて難しく、誤診が多い分野なのです。
神経内科専門医がしっかり診察検査しても、「PDだと思ったらDLBだった」とか、
「PSP患者を死後解剖してみたら実はCBDだった」とか。非常によくあることなのですね。
だからこそ神経内科的にもこれらの疾患を何とか正しく診断できないかということが大事なわけです。
ビデオ講座ではMIBG心筋シンチは鑑別に使える!という話をしていますが(観てね!)
嗅覚障害もこの手の疾患を絞り込むのに使えるということですね。

(111A-45)
72歳の女性。右手が使いにくいことを主訴に来院した。3年前から料理のときに右手で炒めものをかき混ぜづらく、
歩行時に右足を引きずると感じていたが、症状の進行は自覚しなかった。半年前、物を持って平地を歩いているときに小走りになって転倒した。
そのころから徐々に右足の引きずりが強くなっているように感じている。10年前から便秘で5年前から嗅覚の低下を自覚している。
3年前に夫と死別してから抑うつ傾向となり、選択的セロトニン再取り込み阻害薬〈SSRI〉を服用している。
半年前に娘と旅行をしたとき、睡眠中に寝言を言いながら手足をバタバタさせていたという。表情は乏しいが、眼球運動は正常で眼振は認めない。
右優位の筋強剛と無動を認めるが、振戦を認めない。四肢の腱反射は正常で、Babinski徴候は認めない。ドパミントランスポーターSPECTを別に示す。
最も考えられるのはどれか。

a Parkinson病
b 正常圧水頭症
c 多系統萎縮症
d 進行性核上性麻痺
e 薬剤性Parkinson症候群

111A-45

振戦がないPDの問題を国試が作ってくるとはねえ。(答えはa)
この方も運動症状の出てくる3年前よりもかなり早い10年前から嗅覚低下を認めており、
この段階で病院に来てくれれば早期診断ができたかもしれません。嗅覚障害ではなかなか病院に行かないのが実情ですが…。
なお、この問題は嗅覚障害でも解けますが、それと同時にDATスキャンの読影も重要となってきます。
DATスキャンは110回でも出ていますし(110回の方はDATスキャン知らなくても解けますが)
重要性が高いと思われるので、後編で紹介させて頂きます(後編へ続く!)

コメント

  1. 新5年生

    いつもブログの更新お疲れ様です!

    自分はポリクリで神経内科を回った際に若年性パーキンソン病の方を担当していたので、学生の中ではPDについて勉強していた方なのかもしれません。
    PDにおいて嗅覚障害を認めるという事は何となく知っていたのですが、それほど重要な要素であるとは知りませんでした。自分の記憶では担当患者さんに嗅覚障害を認めていなかったような気がしているのですが、もしその重要性を認識して、キチンと診察していたら嗅覚障害があったのかもしれません。またその患者さんは本当にPDであるのかについてもカンファレンスで議論を重ねられている方でしたので、あの時嗅覚障害についてもっと知っていたらなぁと思います。

    自分は志望する診療科を救急科に決めたのですが、担当した患者さんの真の病態について見落とすことなく、専門医の先生方へ繋げたいと思うので、多少浅くなっても幅広い知識を身に着けたいと考えています。なので渡先生が提供してくれる知識は非常に為になっています!
    最近面白いと思ったのは、ステントグラフトの長期成績が想定より悪く、type2エンドリークによる再手術が物凄く増えて問題になっている話で、そういった現場の先生にしか分からないような話を国試に関連して紹介してもらえるととても有難いです。

    最後に渡先生もお仕事等、非常にお忙しいと思いますが、お体をご自愛ください。

    1. Dr.渡

      新5年生さん

      ブログにコメントありがとうございます!
      >担当患者さんに嗅覚障害を認めていなかったような気がしているのですが、
      >もしその重要性を認識して、キチンと診察していたら嗅覚障害があったのかもしれません
      まさにそこみたいです!嗅覚障害は本文にも書いた通り頻度はかなり高いと考えられているのですが、
      患者さんご本人が気づかないケースがとても多いのだそうです。確かに視覚や聴覚が障害された場合に比べて嗅覚って微妙ですよね。
      なので医師側から「最近匂いを感じにくくないですか?」と訊くことが大事だそうです。
      こう訊くと「言われてみれば…」と意識し始める患者さんも多いとか。
      あとは嗅覚テストがあるので、施設によっては嗅覚テストを積極的に実施しているところもあるようです。

      今の段階で診療科が決まっているのはすごいことですね。
      救急は私も研修医時代回って、とてもやりがいのある科だと感じていました。
      私のブログが少しでもお役に立てているならとても嬉しいです♪
      毎日、次々に新しい情報が入ってきて、勉強してるつもりでも知らないことだらけ。一生勉強できるな!と思っています(笑)
      救急も、私の仕事も、幅広い知識が必要なのは同じなので、お互いこれからも切磋琢磨していきたいですね。
      臨床現場の話も、今後もブログでどんどん発信していくつもりです。ご期待ください!

      お気遣いのお言葉、誠にありがとうございました。
      寒くなってきたので、新5年生さんもどうぞ身体にお気を付けください。

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