和式便所と人工関節

2018/11/22

新大阪から品川に帰る道すがら、珍しいものに出会いました。

toilet
新幹線の和式便所。

説明しよう!
新幹線と言えば真っ先にイメージされるのが東海道新幹線ですね。
東海道新幹線(JR東海管轄)は東京~新大阪という日本の二大都市をつなぐもの。
利用者数も圧倒的に多いので、優先的に新しく、効率的かつ機能的な車両が投入されています。

それに対し、山陽新幹線(JR西日本管轄)は新大阪~博多をつなぐもの。
エヴァ新幹線・キティ新幹線など多彩なコラボや、デザイン性に優れる車両の開発など
ユニークな点を評価すべきですが、売り上げや利用者数という意味ではどうしても東海道新幹線に及ばず。
それゆえに東海道新幹線区間ではあまり使われなくなった車両が回されたりしております。

現在東海道新幹線(のぞみ)はほぼ全て最新式の車両(N700A)が用いられており、
この最新車両には和式便所はなく全て洋式です。
新大阪~品川で乗る場合当然のぞみなので和式便所に出会う機会は少ない。
品川や東京から下る場合はまず出会うことはないでしょう。
新大阪から上る場合、山陽区間からの直通車両や臨時列車(700系)があるのでたまに出会いますね。
多くのビジネスマンは「トイレはどうでもいいけど、700系は座席にコンセントが無いからキツイ!
新大阪から乗る時は700系に当たらないように注意!」と思っています、多分。

新幹線に限らず、世の中和式便所というのは非常に少なくなりにけり…。
1番の理由は外国人観光客の増加、といったところでしょうか。外国人に和式はきついですね。
あとはまあ、ノーマライゼーションというやつで、身体障害者にとって和式はやっぱりきついわけです。
身体障害者まで行かなくても、和式の姿勢がきつい人はいくらでもいます。
代表格はcommon diseaseでもある「変形性関節症」
関節可動が制限されるので股関節もですが特に膝関節が悪いとしゃがむのはきついです。

変形性膝関節症の人がしゃがみこみがキツイのは分かるとして、
術後はどうなのか、というのが一つの疑問点でもあります。
しゃがみ込みや正座について調べると、中には「出来ました!」と言っている症例にも出会うと思いますが、
基本的にはいまだに「出来るようにはなるとは言えない(180度近くまで膝を曲げることを目標としていない)」し、
なにより脱臼のリスクもあるのであまり負担のかかる姿勢は避けてもらうのが一般的です。

(112D-52)
78歳の女性。左股関節痛のため救急車で搬入された。本日朝、正座をしていて立ち上がろうとしたときに、バランスを崩して転倒し、痛みのため歩行不能となった。8か月前に左変形性股関節症に対する左人工股関節全置換術を受け、術後経過は良好で、股関節に痛みを感じることなく歩行できていた。既往歴に特記すべきことはない。左股関節は屈曲、内転、内旋位をとっている。血液生化学所見に異常を認めない。股関節のエックス線写真を別に示す。
初期対応として適切なのはどれか。
a 関節造影
b 関節穿刺
c 左下肢のギプス固定
d 左股関節の徒手整復
e 左下肢の持続鋼線牽引
112D-52

最新の国試ですが正座後に脱臼を来した症例。(正解はd)
本問は股関節の話ですが、膝にしろ股にしろ術後も人工関節に負担のかかる動きは避けた方が良いです。

ちょっと古いですがおまけにもう一問。
93A-77
a 高齢者に施行することが多い。
b 化膿性関節炎の治癒後に施行できる。
c 膝部悪性骨腫瘍には施行しない。
d 術後には日本式正座が出来る。
e 晩期合併症としてゆるみがある。

正解はa,e。やはり正座は出来ない。
いまだに正座出来るようになるとか正座させるという選択肢は積極的に正解にはならないでしょう。
ただ近年、人工股関節の技術もデバイスも進化したので、耐用年数は20年くらいです(従来は15年くらいと言われていた)。
まあでも結局耐用年数はあるのであんまり若い人には避けたいですね。この感覚は循環器の生体弁の考え方と同じです。