公衆衛生的目線でコロナウイルスを考える

2020/04/01

Dr渡です。

COVID-19の勢いは止まらず、医学生の皆さんにおかれましても
実習や講義の中止など多大な影響を受けておられること、ご心労お察し致します。
私も生講義の延期が相次いでおり、皆さんに直接お目にかかれないことがとても残念です。

今回は公衆衛生の立場から少しニュースを読み解いていきますので、国試の学習を兼ねてお読み頂ければと思います。

まず、そもそも国や医療者の当面の目標は「コロナウイルスを今すぐ撲滅すること」ではなく
「感染を爆発させないようにすること」です。
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ある程度広まる、ということは免疫の獲得にもつながるので一概に悪とも限らないのですが、
それが一気にではなく、少しずつ広まるべきであるいうこと。
一気に広まるとベッドや医療者が足りなくなる→コロナウイルスはもちろんその他の診療も出来なくなる。
これがいわゆる医療崩壊というやつです。

ベッドの数というのは基本的に都道府県ごとの医療計画をベースに決まります。これは国試にもよく出ますね。
東京都に病院のベッドがどれくらいあるかというと10万ちょっとです。
そのうち感染症病床(特別な感染症の受け入れができる設備と人員がいる病床)数は100床くらい
今東京都でコロナウイルスにはっきり感染している人(PCR陽性の人)は400人くらいいて、全員入院させています。
あれ、100床じゃ足りないじゃんという話なんですが、緊急時なのでなんとか増やしているそうです。
一応東京都的には500床まではなんとか出来そうとのこと。

今東京で一日に新しくコロナ確定する人が60~70人くらいで、治ったり亡くなったりで退院する人が40人くらいです。
つまり1日に入院患者は差し引き30人くらい増えてます。
500床のうち400床が既に埋まってるので残り100床です。今のペースで増えれば3日で限界となります。

医療崩壊まであと3日か!という話なんですが、なんだかんだ4000床まで増やすとのこと。
東京全部で10万床ちょっとなのに4000床と言ったら5%近くをコロナに割く形になるのですごい数ですが
きちんとした管理ができる重症患者向けの病床は700床が限界。
残り3300床は中等症向けなので厳密な管理は難しいようですね。

ちなみにコロナウイルスは指定感染症です。
感染症法は国試のキモですが、指定感染症は意外と出題されません。
なぜかというとコロコロ変わるからと、同じ指定感染症でも扱われ方がそれぞれ違って出しにくいからです。
指定感染症というのは「臨時でその病気を1〜3類感染症のどれかに振り分けることができる」ということですが
コロナウイルスは結核やSARSと同じ2類感染症相当として扱われますので
①指定医療機関に強制入院させることができる
②就業制限をかけることができる
③医療費は公費負担となる
という感じなのですが、病床が足りないので指定医療機関以外にも入院しています(させていきます)。
それでももう病床足りないので今後は感染が明らかでも軽症なら入院させず自宅療養の方針となります。

私達医療者の感覚からすると、軽症ならまあ自宅でも良いかと思うのですが
日々真面目に税金や保険料を払っている一般の方からすれば
軽症とはいえよくわからない病気なのに入院もさせてもらえないというのは
すでに医療崩壊であると思われても無理からぬところでしょうか。。なかなか苦しい局面です。