情報更新 2017/04/28
『ハリソン』との出会いで 劣等生から学年トップに
孝志郎先生は、学生時代から長年『ハリソン内科学』を愛用されていると伺いました。まずは、先生と『ハリソン』との出会いについてお聞かせください。
僕は、3年生までの基礎医学分野では超劣等生でした。なにせ1年生を2回やりましたから(笑)。四苦八苦しながら4年生まで進級していったので、「自分は医者に向いていないのかな」と思ったこともありました。
しかし4年生で大きな転機がやってきました。新たに実際に患者さんを診るための臨床医学がスタートします。ここでクラス全員が、また同じ「ゼロ」からのスタートラインに立つわけです。「基礎医学での苦戦を挽回できるチャンスかも」と思ったのが、『ハリソン』を使うようになったきっかけです。
医者の中でもデキる、偉い先生方が、みんな『ハリソン』を持っていることに気付いたので、一念発起して買いました。難しいはずだと覚悟して挑んだのですが、意外と読みやすく、分かりやすいことに驚いたのです。書かれている内容が具体的にビジョンとして頭の中に入ってきて、理解するのも非常に速かったですね。
進級試験は4年生になってからもありますが、先生はどのように『ハリソン』を使って勉強されていましたか?
『ハリソン』の項目立てを活用することで、試験対策にも効果を発揮しました。『ハリソン』の項目の立て方は非常に機能的なので、それをフォーマットにすれば大丈夫です。 具体的には、『ハリソン』では疾患ごとに「疫学」、「病理」、「病因」、「症候」、「検査」、「治療」と項目立てて説明されています。まずはその順番で書いて、それぞれの項目に説明を加えれば立派な答案になります。基礎医学の科目では劣等生だった僕が、このやり方で記述試験に臨んだら点数が取れ、すぐに上の方に行くことができました。そして気付いたら、学年トップにまで成績が伸びていたのです。
『ハリソン』と患者さんとで〝理論〞と〝ビジョン〞を鍛える
臨床実習では、どのように『ハリソン』を使われていたのでしょうか。
先ほど言いましたが、患者さんと接しながら『ハリソン』を読むことで、疾患についてより理解を深められました。やはり理論だけではダメで、〝理論〞と〝ビジョン〞の両方が大事です。理論が左脳ならビジョンは右脳で、理論と並行して患者さんを診る必要があります。まさに〝ビジョン〞ですよね。
実習で患者さんと向き合って、自分の部屋に戻ったら『ハリソン』で調べるというのをひたすら繰り返しました。実習中の医学生にも、そういう風に使ってみてほしいです。
患者さんから得られた情報を『ハリソン』で調べ、病気を理解するために患者さんと深く接していらしたのですね。
その通りです。『ハリソン』が最も力を発揮するのは臨床現場です。『ハリソン』を読んでから患者さんの所見を取り、戻ってから確認すると、患者さんの言いたいことも引き出せるようになります。 診て、聞いて、調べて、それをまた患者さんに聞いてみる。こうしたことを繰り返すことで、理解が深まります。
例えば、潰瘍性大腸炎の患者さんの足に潰瘍ができているのを見たとします。その時に『ハリソン』で調べてみると、「潰瘍性大腸炎には壊疽性膿皮症が合併することもある」ということがきちんと書いてあります。そして、潰瘍性大腸炎の項目に自分が担当した患者さんのお名前と、受け持った日付を書き込んでいきました。
こういうことも含めて全部『ハリソン』に載っていると、勉強が面白くなります。それで僕は、先生方に頼んで担当患者さんを増やしてもらいました。やがて、かつては超劣等生だった僕が、朝カンファレンスの発表で評価されるようになります。実際に、先生に付箋を貼った『ハリソン』を見せると、非常に評価されました。